駐車場の天井にボウルのような「網状の部品」や、「(泡消火設備)手動起動装置」と書かれた箱があるのを見かけたことはありませんか?
実はそれ、いざという時に火災からみなさんを守る「泡消火設備」が設置されている証拠なんです。
泡消火設備と聞くと、ニュースで泡まみれになった駐車場を想像する方もいるのではないでしょうか。
泡消火設備は火災を消火する一方で、誤って放出されることで被害を受けることもあります。
この記事では、泡消火設備について解説し、なぜ誤って放出されることがあるのかについて紹介します。
消防設備士※の資格を取得している知識を生かして、消防設備について専門用語を使わずにわかりやすく解説します。
みなさんの生活を陰ながら守っている消火設備について知ってもらうことで、みなさんが安心して生活できることを目指しています。
また、消火設備について興味を持ったり、重要性が伝わると嬉しいです。
※消防設備士とは、感知器やスプリンクラー設備などの消防設備を設置・点検できる国家資格です。
※個人が執筆しているため、必ず法令や管理者の指導を遵守してください。
泡消火設備の特徴は油火災に有効
泡消火設備は油火災に強い消火設備で、ガソリンを使用している自動車が多い駐車場では欠かせない消火設備です。
消火設備には様々な種類があります。駐車場で使用する場合、どのような特徴があるかを一覧表にまとめました。
| 項目 | スプリンクラー設備 | 泡消火設備 | ガス消火設備 |
|---|---|---|---|
| 主な消火方法 | 冷却 | 冷却・窒息 | 窒息 |
| 長所 | 強力 | 油火災に有効 | 油火災に有効 濡らさずに消火 |
| 短所 | 濡れてしまう 油火災には逆効果 | 清掃が大変 | 閉鎖が必要 |
| 設置例 | 事務所 | 駐車場 | 駐車場 |
油による火災は水で消火することが難しく、水によって消火するスプリンクラー設備は有効ではありません。
そこで駐車場には泡消火設備やガス消火設備が使用されるのですが、ガス消火設備は消火ガスを部屋の中に充満させる必要があるため、密閉できる駐車場でないと十分な消火効果を発揮する事ができません。
そのため、駐車場では泡消火設備が設置されることが多いのです。
しかし、泡消火設備がガス消火設備よりも性能が高いかというと、そういうわけでもなく、ガス消火設備は消火剤の除去が簡単であるというメリットがあります。
泡消火設備は駐車場に積もった泡を除去する必要があるのですが、泡の処理方法は厳格に管理されており、適切に処理する必要があります。
消火設備には様々な種類があり、目的によって使い分けられているのです。
泡消火設備の消火原理

ガソリンなどの油は軽く、火災時に水を撒くと燃えた油が浮いてしまい、燃えた油が流れてしまうリスクがあります。
さらに、撒いた水が蒸気となり、激しく舞い散ることがあります。このときに燃えた油も一緒にまき散り、大きな炎となることがあります。
泡消火設備は水を泡という形で膨らませて軽くすることにより、油を上から覆うことができます。
油と空気(酸素)を泡で隔てつつ、泡の水分で炎を冷やすことによって消火することができます。
泡消火設備の種類
泡消火設備には大きく分けて、低発泡と高発泡の2種類があります。
皆さんが駐車場で良く見かけるのは低発泡の泡消火設備です。天井から泡が降ってきて、雪のように地面を覆います。
今回は駐車場で使用される低発泡の泡消火設備について解説します。
一方で、高発泡の泡消火設備はもふもふの泡で部屋を埋めてしまう強力な消火設備です。原油が備蓄される場所や、大規模な火災が予想される場所に設置されます。
高発泡の消火設備についてはこの記事で扱いませんが、YouTubeの「消防庁動画チャンネル」で実験動画が公開されているので、ぜひご覧ください。
泡が流れる様子が2分30秒から見られます。
このように、泡が障害物を回り込んで流れていき、部屋を覆い尽くします。
泡消火設備の動作

泡消火設備は上の図のような構成になっています。それぞれの機器の役割について確認していきましょう。
| 機器 | 役割 |
|---|---|
| 水槽 | 消火設備に必要な水をためておく。 |
| ポンプ | 水槽の水を消火設備に送る。 |
| 泡原液タンク | 泡の素(原液)を貯めておく。 |
| ミキサー (混合器) | 泡の素と水を混ぜて適切な濃度に薄める。 |
| 配管の栓A (流水検知装置) | 泡の液が流れる部屋を制御する。 ポンプのスイッチを入れる。 ぎゅうぎゅうに詰められた泡の液に押さえつけられて栓が閉じている。 |
| 配管の栓B (一斉開放弁) | 泡を出すヘッドを制御する。 ぎゅうぎゅうに詰められた空気に押さえつけられて栓が閉じている。 |
| 空気のふた (感熱継手) | 熱せられると栓が落ち、開くようになっている。 |
| 泡の出口 (フォームヘッド) | 泡の液が網状の出口にぶつかることで空気と混じり、泡となる。 |
| 配管のスイッチ (手動起動装置) | 人が操作することで配管の栓Bを開くことができる。 |
次に、どのように泡消火設備が動作するのか、火災が起きた時を想定して追っていきます。
- Step 1火災発生
火災が発生すると、空気がぎゅうぎゅう(高圧力)で満たされている配管をふさいでいた「ふた(感熱継手)」が火災の熱を受けて開き、配管の中の空気が抜けていきます(減圧)。
もし、「ふた」が開く前に、人が火災を見つけた場合は「配管のスイッチ(手動起動装置)」を開くことで、同様に配管の中の空気を抜くことができます。
- Step 2配管の栓B(一斉開放弁)が開放
空気に押さえつけられていた「配管の栓B(一斉開放弁)」が開き、ぎゅうぎゅうに押さえつけられていた(高圧力)泡の液が開放(減圧)されます。
- Step 3配管の栓A(流水検知装置)が開放
泡の液によって押さえつけられていた「配管の栓A(流水検知装置)」が開き、ポンプが動くように信号を飛ばします。
- Step 4ポンプ始動
ポンプが始動して水が送られていきます。送られた水は「泡の素(原液)」と混ざって、「泡の出口(フォームヘッド)」まで到達します。
- Step 5泡が放射
泡の液が「泡の出口(フォームヘッド)」の網になっている部分に激しくぶつかり、空気を取り込みながら泡となり、駐車場へ放出されます。
- Step 6消火
火源の上を泡が覆いかぶさり、酸素を遮断しつつ冷却して消火します。
このように、配管の空気が抜けることを起点として、連鎖的に泡消火設備が動いていきます。
もし、みなさんが泡消火設備が設置されている駐車場で火災を発見した際は、「スイッチ(手動起動装置)」を操作することで泡消火設備を起動させることができます。
もしもに備えて、東京消防庁の動画を見ておくと安心です。
泡消火設備が誤放出するのはなぜ?
みなさんの中には泡消火設備が誤って放出されたのを目撃したり、ニュースで見たりしたことがある方もいるかもしれません。
例として共同通信社のYouTubeチャンネルで公開されている動画をご紹介します。
どのようなときに泡消火設備が誤って放出するのでしょうか。その代表的な原因をご紹介します。
泡消火設備は空気が詰まった配管があり、「ふた(感熱継手)」が開くか、スイッチ(手動起動装置)」を操作することによって、配管内の空気が抜けて動作します。
つまり、配管の中の空気が抜ければ泡消火設備が動き出すため、配管が破損すれば動き出してしまうのです。
「スイッチ(手動起動装置)」は人が操作する必要があるので、人が届く高さに設置されます。
例えば、そこに車がぶつかってしまうと配管が破損してしまい、空気が抜けてしまいます。先ほど紹介した動画でも「軽トラックが消火設備に接触した」旨の報道がありましたよね。
あくまで、ひとつの可能性ですが、このようなことが考えられます。
まとめ
最後までお読みいただきありがとうございます。
今回は駐車場に設置されている低発泡の泡消火設備について解説をしました。
駐車場を使用する際は、天井に網目の機器がないか、「手動起動装置」と書かれた箱がないか見てみてください。
いつもの駐車場を安心して使えるように、泡消火設備が見守っているかもしれません。
この記事で消防設備について興味を持ってもらえたらうれしいです。




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