ガスコンロや石油ファンヒーターなど、僕たちの身の回りには火を使うものがたくさんあります。
一方で、火災による被害が世界中で日々起こっていることも事実です。
なぜ物が燃え、どうすると火災と呼ばれるのか。そして、火災はどうすれば消火することができ、どのような設備が設置されているかについて紹介します。
まずは、こちらのポイントを押さえて、記事の全体をつかんでみてください。
これらのポイントについて、この記事で解説していきます。
消防設備士※の資格を取得している知識を生かして、消防設備について専門用語を使わずにわかりやすく解説します。
みなさんの生活を陰ながら守っている消火設備について知ってもらうことで、みなさんが安心して生活できることを目指しています。
また、消火設備について興味を持ったり、重要性が伝わると嬉しいです。
※消防設備士とは、感知器やスプリンクラー設備などの消防設備を設置したり点検できたりすることができる国家資格です。
燃えるとはどういうことか

みなさんは物が燃えているというのはどのような状況を思い浮かべますか?
焚き火やコンロなど、炎を上げて燃えている姿を思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。
まずは、この「燃える」ということについて整理してみましょう。
燃えるとは何か
燃えるということ「燃焼」とは、激しい酸化反応のことを言います。
例えば、焚き火では薪の炭素が酸素と結びついて二酸化炭素となり、炭素でない部分は灰として残ります。この炭素と酸素が激しく反応するときに、炎が見えます。
ただし、これはあくまでシンプルな例であり、実際には燃焼による熱によって薪の水分が蒸発するなど、多くの現象が伴い複雑な反応をしています。
炎が出ていなくても、炭火やタバコなども激しい酸化反応であり、燃えていると言えるのです。
燃えるために必要な3つの要素
燃えるためには下記の3つの要素がそろうことが必要です。
ひとつずつ確認していきましょう。例として焚火を考えてみます。
物が燃えるためには、そのもの自体が「燃えることができるもの」であることが必要です。
「燃えることができないもの」はそもそも燃えることがないのです。
例えば、焚火で使う薪は燃えますが、焚火台で使われている金属は燃えません。
薪は炭素を含んでおり、この炭素が燃えることができます。
燃えるということは、激しい酸化反応と紹介しました。酸化反応とは、ある物質と酸素が反応することです。
そのため、燃えるためには酸素が必要になります。
焚火をするときに、火力を上げるためにうちわで扇ぐ場面を見たことがあるのではないでしょうか。
これは、空気中に含まれる酸素を燃えている薪に当てることで、火力を上げようとしているのです。
物質と物質が化学反応を起こすには熱が必要です。
酸化反応では熱が出るため、最初に熱を与えて酸化反応が始まれば、連鎖的に燃え続けることができます。
さらに、「燃えるもの」が固体の状態だと十分に酸素と触れ合うことができません。熱によって「燃えるもの」が気体となり、酸素と交じり合うことで燃えやすくなります。
例えば、薪を置いておいても自然に火が付くことはありません。種火や着火剤で加熱されて初めて薪に火が付きます。
炎とは
では、僕たちが燃えていると感じる「炎」とは何なのでしょうか?
激しい酸化反応と言われる通り、物が燃えているときに大きなエネルギーが生まれています。
この大きなエネルギーにより、物質の中に含まれている水素などの元素がイオン化し、これが炎として見えるのです。
簡単に言うと、燃えることによって発生したエネルギーによって物質が大きなエネルギーを持ち、それが光として見えているということです。
また、普段目にするオレンジ色の炎は、燃えたときに発生する煤が燃える色です。そのため、煤が出ないほど高温の炎は青色をしています。ガスコンロの炎は青色をしていますよね。
シミュレーションで視覚的に確認
直感的にイメージで理解できるように、シミュレーションで確認してみましょう。
シミュレーションは、NIST(アメリカ国立標準技術研究所)のFDS(Fire Dynamics Simulator)という火災シミュレーターを使用します。
火災の研究などにも使用されているシミュレーターです。

1 m×1 mの容器に、ヘプタンというガソリンのような燃料が入っています。中央の赤い部分で5秒間加熱して、ヘプタンに着火するというモデルです。
まずは、一般的な空間でシミュレーションを行います。

シミュレーションを開始するとすぐに着火し、3秒ほどで大きな炎が立ち上がります。

シミュレーション開始から2分後には、計算領域の3 mを超える火炎に成長しました。
次に、酸素濃度が少ない場合についてシミュレーションします。

計算領域の酸素濃度を10%に設定し、周囲を壁で覆うことで周囲の空気が流入しないようにします。

点火時間の5秒間を過ぎても火炎は上がらず、その後も火炎が上がることはありませんでした。
最後に、熱がない場合をシミュレーションします。

中央にあった赤い点火源を削除してシミュレーションをします。

2分間たっても火炎は上がりませんでした。
このように、3つの要素が揃わないと物は燃えません。
これらのシミュレーション条件を見ると、燃えないのは当たり前だと思ったのではないでしょうか。
みなさんも、無意識のうちに経験で物が燃えるためには3つの要素が必要だということを知っているのです。
火災とは
日々ニュースで火災の報道がされています。当然ですが、キャンプ場の焚火がニュースで火災と報道されることはありません。
それでは、火災とは何なのでしょうか。
焚火をしていてもいざとなれば、バケツの水を掛ければすぐに消すことができます。
この焚火が近くの落ち葉に燃え移って、どんどん火が大きくなっていくとどうでしょう。
もうバケツでは消せなくなります。火が大きくなるとキャンプ場のホースでも消せなくなるでしょう。
このように炎は人が制御することが困難なほど大きくなることができます。
この炎に、近くで焚火をする人が恐怖を覚えることや、テントが燃えてしまうこともあります。こうなると火災だと思うのではないでしょうか。
日本火災学会※1によると、燃焼によって人々の財産や人命が脅かされることを「火災」としています。
※1 日本火災学会 Webページ:https://jafse.smoosy.atlas.jp/ja/fire-overview
主な消火原理と消火設備
火災から「人々の財産や人命」を守るのが消火設備です。
火災を消火するためには、燃えるための3つの要素を排除することが必要です。もう一度燃えるための3つの要素を確認しましょう。
燃えるものを排除することで火災を抑制することができます。
実際に、江戸時代の主な消火活動は、火災付近の家屋を排除して延焼を防ぐことが主でした。
現在は消火活動として燃えるものを排除することは減りましたが、火災を大きくしないために、法令で燃えにくい壁を使用することが義務付けられていることがあります。
燃えるものと酸素を遮断することで酸化反応を止め、火災を消火することができます。
酸素を含んでいないガスで酸素の濃度を下げたり、水や泡で「燃えるもの」を覆う方法があります。
また、「燃えるもの」と酸素の反応そのものを阻止するという方法もあります。
連続した酸化反応を止めるため、火炎から熱を奪うことで消火できます。
最も効果的なのは水をかけることです。火炎は数百度~数千度に及ぶため、100℃までしか上がらない水は強力な冷却材となります。
炎に水をかけて消火するのは、みなさんが真っ先に思い浮かべる消火方法だと思います。
これらの消火方法をいち早く実現するために、消火設備は様々な施設に設置されています。
どのような消火設備があるのかを簡単に紹介します。
スプリンクラー消火設備は、水を撒くことで火災の温度を一気に下げて消火する、消火の基本で強力な消火設備です。
多くの施設で使用されています。
泡消火設備は、「燃えるもの」を泡で覆うことで酸素と遮断する消火設備です。
ガソリンなどの油は水よりも軽いので、燃えている油に水をかけてしまうと逆に火災が拡散してしまったり、蒸気によって炎が大きくなる可能性があります。
そのような危険がある施設の場合はスプリンクラー設備ではなく、泡消火設備が設置されます。
ガス消火設備は、酸素濃度を下げたり、酸化反応そのものを止めることで消火する消火設備です。効果は使用するガスの種類によって変わります。
電気を使用する場所で水を撒いてしまうと、機械が故障したり漏電する可能性があります。また、美術品なども濡れてしまうと大きく損傷してしまいます。
さらに、ガスで消火するため、消火剤放出後の復旧が早いという特徴もあります。
粉末消火設備は、酸化反応そのものを止めることで消火する消火設備です。
電気火災など多くの火災に対して有効であり、ガス消火設備が部屋の密閉を必要とするのに対して、粉末消火設備は部屋の密閉を必要としません。
まとめ
物が燃えるためには、燃えるもの、酸素、熱の3つの要素が必要です。
この要素が揃って起こる燃焼現象が大きくなり、人々に脅威を与えると火災となります。
人々を火災の脅威から守るために設置されているのが消火設備であり、用途ごとに有効な消火設備が選ばれています。
小さな火からでも火災は起こるため、みなさんも火の取り扱いには注意してください。
そして、みなさんの生活を守る消火設備にも目を向けてもらえると嬉しいです。


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