実写映画のシティーハンターで登場するスプリンクラーのシーンについて、現実的かを消防設備士が考察しています。
ドラマや映画を見ているとスプリンクラーなどの消火設備が登場することがあります。場面を派手にしたり、危機が訪れたりとその登場の仕方は様々です。
消火設備って実際にこんな風に動くの?と疑問を持ったことはないでしょうか。今回はNETFLIXで独占配信されている、実写映画のシティーハンターに描写されているスプリンクラーの放水シーンについて、消防設備士の僕が考察します。
※いち消防設備士の考察です。気楽にお読みください。
NETFLIXのシティーハンターのスプリンクラー作動シーン
シティーハンターは北条司氏による漫画なのですが、今回ご紹介するNETFLIXのシティーハンターは、その漫画を原作として2024年に公開された実写映画です。
今回注目するスプリンクラーの作動シーンは映画の序盤に登場します。
探していたターゲット取り逃がした主人公の冴羽獠と相棒の槇村秀幸は車で岐路につきます。
槇村秀幸は妹の香とレストランで食事をする予定があるため、冴羽は槇村をレストランへ送り届けます。
槇村と香がレストランで食事をはじめ、槇村が香に隠していた秘密を打ち明けるところで、ある原因によって狂暴化した人物が運転するトラックがレストランへ衝突し、中まで突っ込んできます。この時にスプリンクラーが作動しています。
異変に気付いた冴羽はレストランに戻りますが、槇村は狂暴化した運転手に殺害されてしまいます。
スプリンクラーが作動する中、冴羽は槇村を抱きしめ、最期の言葉を聴きます。
スプリンクラーによる放水が悲しいシーンを強調します。
消防設備士がスプリンクラー作動シーンについて考察
それでは、消防設備士の僕が今回のシーンについて考察します。
どのような種類のスプリンクラーが設置されているか
まずは、このレストランに設置されていたスプリンクラー設備はなにかを考えます。
スプリンクラーに種類があるの?と疑問に思った方がいるかもしれません。実はスプリンクラーは設置される場所や目的によってさまざまな種類があります。
この作品では、放水するときにスプリンクラーヘッドが映っています。スプリンクラーヘッドの形状から開放型のスプリンクラーヘッドが使用されているシステムであることが考えられます。
開放型のスプリンクラーはどのようなシステムか解説
一般的な湿式スプリンクラーの仕組み

まずは、一般的な湿式スプリンクラーについて簡単に説明します。スプリンクラーシステムの先端には、水を効率よく撒くためのスプリンクラーヘッドという部品がついています。
一般的なスプリンクラーは、閉鎖型のスプリンクラーヘッドが使用されています。閉鎖型のスプリンクラーヘッドは、その名の通り閉鎖されている、つまり栓がされているような状態です。
この栓は高温になるとはずれる仕組みになっています。
スプリンクラーヘッドまで配管がつながっているのですが、配管の中が水で満たされており、スプリンクラーヘッドで栓がされている状態です。
火災によってスプリンクラーヘッドの栓が熱を受けて外れると水が流れだします。栓が外れたスプリンクラーヘッドのみから水が流れて消火するようになっています。
開放型のスプリンクラーの仕組み

一方で開放型のスプリンクラーヘッドは栓がされていません。そのため、配管の中を水で満たそうとすると水が流れ出てしまいます。
そこで、もっと水源に近いところで、すべてのスプリンクラーヘッドに行く水に対して栓をしています。この栓は先ほどの湿式スプリンクラーにもある栓ですが、簡単のために説明は省略しました。
火災が起きると感知器が火災を検知します。この感知器からの信号によって栓が開いて水が流れ出します。
その先のスプリンクラーヘッドは栓がされていないので、同時に多くのスプリンクラーヘッドから放水することができます。
多数のスプリンクラーヘッドから放水するので、強力な消火能力を持っている一方で、大量の水を送ったり溜めておいたりする必要があります。
設置場所
開放型のスプリンクラーヘッドは、舞台などの閉鎖型のスプリンクラーヘッドを設置しても消火が困難な場所に設置されます。
作品のように作動するのか
開放型のスプリンクラーヘッドは同時に多数のスプリンクラーヘッドから放水する特徴があります。この作品ではレストランに設置されている複数のスプリンクラーヘッドから放水しているように見えるので、開放型のスプリンクラーヘッドを使用したシステムと作動のしかたが一致します。
開放型のスプリンクラーヘッドが作動するためには、火災によって感知器が作動する必要があります。トラックが衝突した際に火災は見られないので、作動するための条件がそろっていないと考えられます。
何とかひねり出すとすれば、トラックの衝突による衝撃で感知器の配線が短絡した可能性があります。基本的には、感知器を制御する装置で短絡を検出しているのですが、短絡を検出しない設定もあります。ただ、感知器の短絡が火災以外で起こる可能性は少ないのではないかと思います。
レストランでは通常の湿式スプリンクラーが設置されるため、開放型のスプリンクラーヘッドは使用しないと考えられます。
ここまでの考察内容を表にまとめます。
項目 | 判定結果 |
---|---|
システム作動の様子 | 〇:同時に放水している |
作動フロー | ×:可能性は0ではないがほぼ無いと考えられる |
設置場所 | ×:レストランに使用することは考えにくい |
以上より、この作品でのスプリンクラー作動は現実では考えにくいと思います。
【おまけ】NETFLIXのシティーハンターの感想
僕はこれまでシティーハンターを見たことはなかったので、そのほかの作品との関連についてはわかりません。本作品だけを見た感想です。
敵と味方がわかりやすく、アクションも痛快で楽しむことができました。時間も1時間強なので中だるみすることもなく観れました。
槇村が香にレストランで打ち明けようとした秘密はその場面でも薄々わかるのですが、後半には詳しい内容がわかり、物語に引き込まれました。
面白い作品だったので、気になる方は是非ご覧ください。
まとめ
最後までお読みいただきありがとうございます。
NETFLIXで配信されている、実写映画のシティーハンターで登場したスプリンクラーのシーンについて、消防設備士の僕が考察しました。
この作品のスプリンクラーの作動は、現実の日本で起こることは考えにくいです。
ただ、消防設備が冒頭における印象的なシーンで、感情に訴える演出として使用されたことはうれしく感じます。
消火設備は普段気にすることも少ないですし、作動して消火してもニュースになることはほとんどありません。
しかし、火災の脅威からみなさんの命を守る大事な設備なので、興味を持っていただけたら嬉しいです。
この記事が皆さんの参考になればうれしいです。
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