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二酸化炭素消火設備の事故防止のための安全対策 | 消防設備士が解説

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この記事について

 二酸化炭素消火設備を使用することによる危険性と、事故防止のために取られている対策を解説しています。

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  • 二酸化炭素消火設備の安全性に不安がある
  • 勤務先やよく利用する施設に二酸化炭素消火設備がある

 みなさんは二酸化炭素消火設備による事故を耳にしたことはないでしょうか。

 二酸化炭素消火設備は二酸化炭素ガスを消火剤として火災を消火する設備で、古くから使用されています。

 一方で、二酸化炭素が持つ特性から人体への危険性があることも確かです。そのため、二酸化炭素消火設備による事故を防ぐために、様々な安全対策が取られています。

 そこで本記事では、消防設備士の僕が二酸化炭素消火設備の安全対策についてわかりやすく解説します。

 みなさんが二酸化炭素消火設備について過度な不安を感じずに施設を利用できることをこの記事の目的としています。

※この記事は消防予第573号(令和4年11月24日)を参考にしています。二酸化炭素消火設備は古くからある設備のため、この記事で紹介する安全対策がすべてされているとは限りません。緊急時には身の安全を最優先に考え、この記事の内容を過信しすぎないようにしてください。消防や設備の管理者から指示があった場合は従ってください。

ガス消火設備と二酸化炭素について

ガス消火設備は消火設備のひとつ

 消火設備とは、火災時に炎を消して命や建物を守ることを目的とした設備です。

 消火設備は目的や用途によってさまざまな種類があります。例えば、有名な消火設備として「スプリンクラー設備」が挙げられます。

 今回は、ガスを部屋の中に充満させて消火する「ガス消火設備」のなかでも、二酸化炭素消火設備について、危険性と安全対策を紹介します。

 ガス消火設備には消火剤として様々なガスが使用されています。それぞれのガスの詳細についてはこちらの記事で解説しています。

二酸化炭素消火設備の危険性

 二酸化炭素消火設備が作動すると、部屋の中の二酸化炭素濃度は約35%になるように設計されています。

 二酸化炭素は高濃度で人体に対して毒性を持ちます。ここで、二酸化炭素濃度が人体に与える影響を表にまとめます。

二酸化炭素濃度人体への影響
2%呼吸が深くなる
3%~6%過呼吸、あえぎ、吐き気
7%~9%激しいあえぎ
約15分で意識不明
10%以上約10分で意識不明
25~30%呼吸消失、感覚消失
数時間で死に至る
約35%【ガス消火設備が作動したときの濃度】

※瀕死状態でみられる異常な呼吸

 参考:(一社)日本救急医学会 https://www.jaam.jp/dictionary/dictionary/word/0912.html

 この表からもわかる通り、ガス消火設備によって二酸化炭素が出された部屋にいると命の危険があります

 実際に死亡事故も発生しています。

  • 令和2年に機械式駐車場で起きた事故(愛知県)
  • 令和3年に機械駐車場で起きた事故(東京都)
  • 令和3年にビルの点検中に起きた事故(東京都)

 このように、二酸化炭素消火設備は危険性が高い消火設備なのです。

二酸化炭素消火設備はなぜ使用されているのか

 二酸化炭素消火設備の危険性について紹介しましたが、なぜ危険な二酸化炭素消火設備が使われているのでしょうか。

 その理由はいくつかあります。

古くから使用されている

 二酸化炭素消火設備は1961年に消防法に定められており、消火ガスとしてはもっとも古くから使用されています。※1

 次に早く法令化されたハロンでも、法令化されたのは1974年なので、この期間は主に二酸化炭素が使用されてきました。※2

参考1:株式会社コーアツ https://www.koatsu.co.jp/gas/change.php

参考2:東京計器株式会社 https://www.tokyokeiki.jp/products/bousai/bousai_100th.html

ボンベの本数が少ない

 ガス消火設備ではボンベ室と呼ばれる部屋に消火ガスが入ったボンベを設置します。

 二酸化炭素は圧縮すると液体にしてボンベに詰めることができます。液体にすると大量のガスに相当する量を、比較的狭いスペースで保管することができます。

 そのため、二酸化炭素を消火ガスにすると比較的小さなボンベ室に収められます。

 逆に、例えば窒素を消火ガスに使用すると、ボンベが多くなってしまうので消火ガスの置き換えも簡単にはできません。

コストが安い

 二酸化炭素は様々な用途に古くから使用されています。

 例えば、みなさんの日常に近いもので言えば炭酸飲料に使用されています。他にも溶接や排水の中和などに使用されています。二酸化炭素の固体であるドライアイスも見かけると思います。

 その結果、日本では年間約100万トンの二酸化炭素が供給されています。

 消火ガスとして以外にも大量に生産されているため、ガス自体の価格が安くなり、消火設備としても安くなる傾向にあります。

参考(一社)日本産業・医療ガス協会 https://www.jimga.or.jp/gas/world_co2/

 このような理由から二酸化炭素消火設備が使用されている建物が多く存在しています。

 ただし、前提としては常時人の出入りがない場所に限定して設置することが求められています。

二酸化炭素消火設備は古くから使用されていますが、高濃度の二酸化炭素を使用することによる危険性があります。

二酸化炭素消火設備の動きについて

二酸化炭素ガス消火設備のイメージ図

 二酸化炭素消火設備は、基本的に下記の手順で作動します。実際の動き方は建物や設備によって異なる場合があります。

  1. 下記のどちらかが発生することによってガス消火設備が動き出します。
    • 2種類の感知器が両方とも作動する(1種類目でスピーカーが鳴る)
    • 火災を見つけた人が消火設備起動用のボタンを押す(扉を開けるとスピーカーが鳴る)
  2. スピーカーから消火剤を放出するから避難してくださいという旨の放送が流れます。
  3. ガス消火設備が起動するまでのカウントダウンを行います。これは避難するために必要な時間がカウントダウンされるのですが、消火ガスが二酸化炭素の場合は最低でも20秒必要です。
  4. 施設によっては消火ガスが漏れないようにシャッターが閉まります
  5. 小さなボンベを電気的に開けて、大きなボンベにガスを送ります。
  6. 大きなボンベを小さなボンベから送られるガスの力で開けて、二酸化炭素を部屋に放出します。
  7. 二酸化炭素が出ると部屋の扉についている表示灯がガスが出ていることを表示します。

 フローにまとめると下記のような流れです。

ガス消火設備が作動する流れ

二酸化炭素消火設備の安全対策

二酸化炭素消火設備を設置できない場所

 二酸化炭素消火設備は次の3条件のどれかに当てはまる場合は設置しないこととされています。

  • 部外者や不特定多数のひとが出入りする可能性がある場所
  • 部外者や不特定多数のひとが一定時間滞在する可能性がある場所
  • 常に人による監視が必要な場所(防災センターなど)

 二酸化炭素消火設備を設置する場合には、安全に避難できるように考えられています。2方向に避難できるように出入り口を2か所以上設置することを原則としています。

 例外的に、避難経路がわかりやすく、出入り口までの距離が20メートル以下である場合も認められています。

 ドアも外開きになっていて、ガスが出てしまった場合でも簡単に開けられるようになっています。

 ガス消火設備によって部屋の中に消火ガスが出ると、部屋の中の圧力が部屋の外よりも高くなります。

 そうすると、部屋の内側から外側に力がかかるため、内開きのドアが開かなくなってしまいます。

 そのため、外開きにするように求められています。

二酸化炭素消火設備が設置されていることを知らせる標識

二酸化炭素消火設備の標識の例

 二酸化炭素消火設備が設置されている部屋の扉には「二酸化炭素消火設備が設置されているため、消火ガスが放出された場合は入室してはいけない」といった内容の標識が掲示されています。

 この標識は黄色をベースとしていて目立つようになっています。人が二酸化炭素を吸うと危険なことを伝えるイラストも掲示されています。

 また、二酸化炭素が部屋から漏れて隣の部屋に影響を及ぼす可能性があるので、二酸化炭素ガス消火設備が設置されている部屋の隣の部屋にも標識が掲示されています。

 この標識は、「隣の部屋に設置された二酸化炭素消火設備の消火ガスが流入することがあるので、消火ガスが出た場合は避難する」といった内容が書かれています。

 二酸化炭素が部屋から漏れることを考慮して、部屋の構造を消火剤が漏れないようにすることが求められていますが、消火ガスが漏れてしまった場合も考慮しています。

誤作動を防ぐための仕組み

 ガス消火設備が起動するための方法では、誤って消火ガスが出ることを防ぐための安全対策が盛り込まれています。

感知器による自動起動について

 感知器は、配線の短絡※1やたばこなどの様々な要因によって誤作動する可能性があります。

 そのため、1種類の感知器ではガス消火設備が動かずに、別の種類の感知器が同時に作動することによって、はじめてガス消火設備が動き出します。

 例えば、壁の工事をしていて発生したほこりで煙感知器が作動してしまっても、別で設置されている熱感知器が作動しなければ、ガス消火設備は作動しません。

 また、メンテナンスを行う際には感知器による自動起動をしないように設定します。

手動起動ボタンによる手動起動について

 ガス消火設備の起動ボタンには扉がついており、扉を開けないと起動ボタンを押せないようになっています。扉にはシールが貼ってあり、開けられたかどうかがわかるようになっています。

 そのため、物がぶつかってしまって、意図せずに押されてしまうということがありません。

 二酸化炭素消火設備の手動起動ボタンは、消火設備の起動ボタンであることがわかるように、他のスイッチとの差別化や、明確に文字が読めるように明るくするようになっています。

 さらに、二酸化炭素消火設備の場合は動作するための条件を追加するように求められており、手動起動ボタンと感知器の作動が両方揃うまでガス消火設備は動作しないように求められています

 ひとが押すだけではなく、実際に火災が起きていることをシステムとして確認してから動作します。

二酸化炭素消火設備のフロー

※1短絡:配線同士が接触して、電気が流れないはずの場所に電気が流れてしまうこと。

二酸化炭素を途中で止める仕組み(閉止弁)

閉止弁のイメージ図

 二酸化炭素消火設備には、「閉止弁」と呼ばれる、配管の途中で消火ガスを止める弁を設置します。弁とは蓋のようなイメージのものです。

 メンテナンスをするときには、この閉止弁を閉めて配管を塞ぎます。閉止弁を閉めると、もしガスが出てしまっても、閉止弁とボンベの間にガスが閉じ込められて、部屋の中にガスが出ないようになります。

 メンテナンスが終わったら閉止弁を開けます。閉止弁が閉まっている間は制御盤の表示灯が点滅するなど、閉止弁を開け忘れないような工夫がされています。

二酸化炭素消火設備では、誤って部屋に二酸化炭素ガスが出ないように様々な安全対策がされています。

二酸化炭素消火設備が作動したらどうするか

 それでは、ガス消火設備が動いたときに部屋の中にいた場合はどうすればいいのでしょうか。

 前の章で紹介したように、放送が鳴ってもすぐには部屋にガスが出ないので落ち着いてください。そして、すぐに避難してください。

 基本的には二酸化炭素ガス消火設備は避難するための時間がカウントダウンの秒数に入っています

 二酸化炭素消火設備が動いてから二酸化炭素ガスが出るまでに20秒以上の猶予を設けることが原則とされています。

 ガスが出る前に部屋から無事に出ることができて部屋の中に他の人がいる場合は、起動ボタンの近くにある「非常停止ボタン」を押すことも選択肢としてあります。

 非常停止ボタンを押すことで、カウントダウンが戻ったり、カウントダウンを停止することができます※1。施設にもよりますが、非常停止ボタンというものがあることを覚えておいてください。

 無事に避難ができて実際に火災が発生している場合は、起動ボタンを押してガス消火設備を動かしてください。

 ガスが部屋の中に出た場合は絶対に部屋の中に入らないようにしてください。

 二酸化炭素ガスは、部屋の中に出たときには白く見えますが、二酸化炭素ガス自体は無色無臭なので、ガスがないように見えても高濃度の二酸化炭素が残っている可能性があります。※2

ガス消火設備が動いた放送が流れた時は落ち着いて避難しましょう。

※1基本的に非常停止ボタンを押すとカウントダウンが止まりますが、感知器が煙や熱などによって感知器が作動している状態だとまたカウントダウンが始まります。カウントダウンが再び始まっても慌てずに、避難が終わるまでカウントダウンが0にならないように非常停止ボタンを押し続けてください。

※2二酸化炭素は圧力をかけて液体でボンベの中に入っています。ボンベから出ると急激に体積が膨張し、温度が下がります。この時に空気中の水分が液化して白く見えます。そのため、二酸化炭素ガスが出るタイミングでは白く見えます。

まとめ

 最後までお読みいただきありがとうございます。

 二酸化炭素消火設備について、危険性と事故防止のための対策について紹介しました。

 二酸化炭素消火設備は、みなさんの命を火災から守る大事な設備である一方で、高濃度の二酸化炭素を使用する危険性があることも事実です。

 そのため、標識の掲示や閉止弁の設置などの安全対策をして、みなさんが安全に施設を使用できるように安全対策が取られています。

 万が一、二酸化炭素消火設備が動いた場合には、あわてずに、できるだけ早く避難しましょう。避難した後は部屋に入らないようにしてください。

 この記事が、二酸化炭素消火設備への過度な不安を減らし、正しい知識を得るきっかけになれば嬉しいです。

 二酸化炭素消火設備が登場しているドラマについても解説しています。

 

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