- ガス消火設備の安全性が気になる
- ガス消火設備が誤作動したらどうしたらいいのか不安
- 消防設備のことを知りたい
街を歩いていて「ガス消火設備」という言葉を見かけたことはないでしょうか。
ガス消火設備は火災からみなさんを守るために、さまざまな施設に設置されています。
一方で、ガス消火設備が原因となった事故を耳にして不安を感じたことがある方もいるのではないでしょうか。
実は、ひとことでガス消火設備と言っても、使用されているガスによって消火するためのプロセスや安全性が異なります。
この記事では、消防設備士の僕がガス消火設備について紹介し、もしガスが出てしまったときにどうすれば良いかについても解説します。
みなさんがガス消火設備について知り、ガス消火設備が設置されている場所を安心して利用できるようになってもらえたらうれしいです。
※いち消防設備士が書いた記事です。公的な情報と異なる点があれば、公的な情報を優先してください。
ガス消火設備で使用されるガスの種類
ガス消火設備とは、その名の通り部屋の中に消火ガスを出すことによって火災を消火する設備です。
使用するガスによって消火のプロセスや安全性が異なります。
日本のガス消火設備でよく使われるガスについて一覧表にまとめました。
| 消火ガス | 種類 | 歴史 | 人体への危険性 |
|---|---|---|---|
| 二酸化炭素 | 不活性ガス | 古い | 高い |
| 窒素 | 不活性ガス | 新しい | 低い |
| IG-55 | 不活性ガス | 新しい | 低い |
| IG-541 | 不活性ガス | 新しい | 低い |
| ハロン1301 | ハロゲン化物 | 古い | 炎がなければ低い |
| FK-5-1-12 | ハロゲン化物 | 新しい | 炎がなければ低い |
実は、二酸化炭素以外のガスは誤って作動してしまっても、人体への影響は比較的少なく済みます。
安全性については次の章で詳しく解説します。
ガス消火設備に使用されるガスの安全性
二酸化炭素以外の不活性ガス
炎は十分な酸素がないと燃え続けることはできません。
二酸化炭素をはじめとした不活性ガスと呼ばれる消火ガスは、ガスを部屋の中に充満させて、部屋の酸素濃度を下げることによって消火します。
二酸化炭素以外の、窒素、IG-55、IG-541はほとんど毒性がありません。
これらの消火剤が出たときの部屋の酸素濃度は、炎が燃え続けられない酸素濃度よりも低くしつつ、人間が生存できる酸素濃度よりも高くなるようにコントロールされています。
そのため、もし不活性ガスが充満した部屋に人がいたとしても安全性には大きな問題がありません。
ハロゲン化物
炎は燃えるものと酸素が化学反応を起こして燃え続けます。
ハロン1301やFK-5-1-12というハロゲン化物は炎が燃え続けるための化学反応を止める性質を持っています。
そのため、不活性ガスよりも少ない量で強力な消火能力を持っています。少ない量で消火できるので、必要なボンベ本数も少なくなり、比較的狭いスペースにボンベを保管することができます。
また、不活性ガス同様に、部屋の酸素濃度は安全性に問題がない濃度になるように設計されています。
ハロゲン化物自体には毒性がないため、もし消火ガスが充満した部屋に人がいたとしても安全性には大きな問題がありません。
しかし、ハロゲン化物は炎が燃える化学反応を止めるときにフッ化水素という毒物を出します。
火災時にハロゲン化物で消火した部屋にいると危険性が高まります。
二酸化炭素
二酸化炭素は先ほども紹介した不活性ガスで、部屋の酸素濃度を下げて消火をします。
高濃度の二酸化炭素には毒性があります。消火設備を使用した部屋では二酸化炭素の濃度が約35％まで上がり人体に深刻な被害を及ぼします※。
そのため、二酸化炭素を使用した消火設備が作動している部屋に入るのは危険です。
二酸化炭素を使用した消火設備が設置されている部屋には、二酸化炭素を使用した消火設備が設置されていることが掲示されています。
なぜ危険な二酸化炭素を使用しているのかというと、古くから使用されている消火剤であることが一因です。
※二酸化炭素消火設備の設置に係るガイドラインの策定について（通知）（令和4年11月24日）
二酸化炭素消火設備についてはこちらの記事で詳しく解説しています。
ガス消火設備の動作フロー
それぞれのガスの安全性について解説しました。
ここからは、ガス消火設備の基本的な動きについて確認しましょう。
ガス消火設備からガスを出す方法は2つの方法があります。
1つは火災感知器が反応してガス消火設備が動く方法です。
2種類の感知器が作動することで、初めてガス消火設備が動き出す仕組みになっています。感知器が1つ作動した時点でスピーカーから放送が流れます。
続いて2種類目の感知器が作動することで、ガス消火設備のカウントダウンが始まります。カウントダウンが0になると部屋にガスが出ます。
その後、部屋のドアについた表示灯が点滅してガスが出たことを知らせます。
2つ目はボタンを押してガス消火設備を動かす方法です。
ガス消火設備が設置されている部屋の外には、ガス消火設備を動かすためのボタンがついています。
火災を発見したときには、扉の中に入っているボタンを押すことでガス消火設備を動かすことができます。
扉を開けたときにスピーカーから放送が流れることが多いです。
ボタンを押した後は、感知器でガス消火設備が動いたときと同様に、カウントダウンをしてからガス消火設備が動きます。
以上がガス消火設備の基本的な動きです。
ガス消火設備が作動したときの対応
それでは、ガス消火設備が作動したときに部屋の中にいた場合はどうすればいいのでしょうか。
前の章で紹介したように、放送が鳴ってもすぐには部屋にガスが出ないので、落ち着いて、できるだけ早く避難してください。
もし、ガスが出てしまっても、扉は外向きに開くため簡単に開けることができます。
また、二酸化炭素以外のガスの場合は人への影響ができるだけ小さくなるように設計されていることを思い出してください。
ガスが二酸化炭素の場合は、避難するために時間がカウントダウンの秒数に入っていることが多いです。原則は20秒は猶予があるように設定されています。
ガスが出る前に部屋から無事に出ることができて部屋の中に他の人がいる場合は、起動ボタンの近くにある「緊急停止ボタン」を押すことも選択肢として考えられます。
緊急停止ボタンを押すことでカウントダウンが戻ったり、カウントダウンを停止することができます※。
無事に避難ができて、火災が発生している場合は、起動ボタンを押してガス消火設備を動かしてください。
ガスが部屋の中に出た場合は絶対に部屋の中に入らないようにしてください。
※基本的に緊急停止ボタンを押すとカウントダウンが止まりますが、感知器が煙や熱などによって感知器が作動している状態だとまたカウントダウンが始まります。カウントダウンが再び始まっても慌てずに、避難が終わるまでカウントダウンが0にならないように緊急停止ボタンを押し続けてください。
まとめ
最後までお読みいただきありがとうございます。
ガス消火設備でよく使われているガスの種類とその安全性、ガスが出たときの対処法について解説しました。
ガス消火設備が設置されている部屋でも、その基本的な仕組みを知っていれば、安心して使用できると思います。
今回はご紹介できませんでしたが、誤ってガスが出ることを防ぐための対策が何重にもされています。こちらの二酸化炭素消火設備について解説した記事で紹介しています。
陰ながらみなさんの生活を守っている防災設備について興味を持ってもらえるとうれしいです。
ガス消火設備が登場するドラマについて解説した記事を書いているので、良かったらご覧ください。
この記事がみなさんの参考になればうれしいです。
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